加賀移住ものがたり

ゴッドハンドストーリー

そのころ私は、眠い目をこすりながら早朝4時に起き、老人ホームで入居者のための食事作りの仕事をしていました。
6年前に、パートナーと別れた私は、まだ幼い4歳の息子の手を引き、実家で戻ることに。
実家には母親が一人で住んでいました。

父は, もう亡くなっていたので、私と息子、私の母との3人暮らしです。

「私の人生も終わったな・・・。」もうすぐ50才を迎える私は、正直そう思っていました。

仕事の調理場では、オバさまたちが幅をきかせていて、かわるがわる誰かの悪口を言っています。家に帰れば、いつも機嫌の悪い私の母親。
毎日が、ちっとも楽しくありません。

せめて今の状況から抜け出したい。そんな思いから、リラクゼーションの店を開店したのが、今からちょうど2年前。
私は以前に、約4年の間60分2980円のマッサージ店に勤めていたので、その経験を生かしての出店です。
“安ければ何とかなるだろう”そんな風に最初は思っていました。
新聞広告にはオープニングキャンペーンにつき 60分1000円!あっという間に予約でいっぱいになりました。思った通り、安くすればお客さんは来ます。
客の反応もバッチリで「また利用させてもらうよっ!」と、スマイルいっぱいで、客は帰っていきました。

1週間のオープニングキャンペーンも終わり、ほっと一息。通常の営業がはじまると、パッタリと客は来なくなりました。
1ヵ月目の売り上げ8万円、2ヵ月目の売り上げ8万円、3ヵ月目の売り上げ8万円。リピーター客は、ほとんどいません。知人は私から顔を背けはじめ、近所のリサイクルショップの主人だけが、私に、やさしく微笑みかけてきます。

「春まで店をつづけられるかな・・・。」運転資金も底をつき始め、打つ手もありません。息子の「お客さん来ないね~。」の一言が、グサリと胸に突き刺さります。

そんな私に、たった一つ残された道は、神頼みのみ。そんな状況でした。

「神様、お助け下さい!」よく晴れた秋の朝、地元の神社で神頼みしたあと、オープンの準備のため店に戻ります。店の掃除も終わり、お客さんを待ちますが、やっぱりお客さんは来ません。
仕方がないのでユーチューブ動画を見ることに。パソコンの電源を入れ、ユーチューブの画面を開いた、その時です。
ある1本の動画が目に留まりました。その動画は、あるユーチューバーが京都のゴッドハンド整体師の施術を受けに行く、という内容でした。
それまで、整体のことを知らなかった私は、膝の痛みや、肩こりを治してしまうゴットハンド整体師の施術に感嘆し、その日から、関連の動画を毎日、毎日、1日に5時間~6時間見入っていました。
ほどなくして、その京都のゴットハンド整体師とLINEで連絡できることと知り、ダメもとで、「施術を教えてくれませんか!」とワラをもすがる思いで頼みこみます。

「いいですよ。12月7日に京都に来てください。」

たった半日、6時間の整体の講義を受け終えた私は、風が冷たい京都駅で帰りの新幹線を待ちながら息子の手を少しだけ強く握りしめていました。
まだ、状況は何も変わってないけど、何とかなるかもしれない。

静岡に戻った次の日の営業。最初のお客さんは、膝に痛みのある若い女性でした。その女性は、「ほんとに膝の痛みが治るの?」と、私のことを疑っています。
ゴットハンドに施術を教えてもらったとはいえ、まだまだ私も自信がありません。恐る恐る施術を始めますが、ぎこちない私の施術が、少し痛いみたいで、キレ気味の女性。
ようやく30分の施術が終わり、女性がベットから不機嫌そうに立ち上がりました。その次の瞬間、彼女は目をパチクリさせながらこう言ったのです。
「エッ?膝が痛くないっ!」

この日から、お客さんの反応が一変します。4ヵ月目の売り上げは、20万円。まだまだ利益は出ませんが、、もしかして本当に何とかなるかもしれないと、勇気も沸いてきました。
京都の整体師さんに教えてもらったのは、あくまで基本的なことでなので、基本だけでは対応できずに壁にぶち当たることもありました。そんな時は、私なりに工夫しながら、技術も少しづつ進化させ、スキルを磨いてきます。

そして、開店1周年を迎えることができました。

私の店は、地域一番の繁盛店となったばかりか、まさか、私自身がゴッドハンドと呼ばれるようになっていたのです。

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